公開日 2022年12月19日
2022年12月13日(火)12:10~13:00に第61回ご縁ネットオンラインミーティングを実施しました。今回は石垣 美歌先生(島根大学 戦略的研究推進センター)「分子分光法による生体の非破壊分析-生体をあるがまま捉えられるか?-」というテーマでお話をいただき、島根大学、広島大学、松江高専等から13名の参加がありました。
石垣先生は「命があること、命が宿るとは?」という生命の神秘に迫るテーマに分子分光の立場からアプローチしています。
分子分光法の一つラマン分光法は分子構造を鋭敏に反映したスペクトル情報を非破壊的に取得でき、近赤外分光法は生体分子組成や分子濃度、タンパク質などの生体分子と水分子との相互作用を同時に分析することができるそうです。
本セミナーではメダカの胚発生やマウスの卵子の成熟度に関してこれらの分析方法を用いて、生きたまま生体機能や代謝を評価しようとしている先生の研究を紹介していただきました。
メダカの胚発生を用いた研究では胚の活性化をタンパク質や脂質などの物質の違いではなく、水分子の構造の違いとして検出することができたとのことです。また、初期心臓形成過程を明らかにすることにつながる心臓の動きや血流の非染色イメージングも画期的な研究でした。
さらに、マウスの卵子を用いた研究では過熟になると脂質代謝、呼吸活性ともに低下することを見出したとのことです。この研究はラマン分光分析技術の卵質評価への応用にもつながり、少し先の将来には生殖補助医療への貢献も可能とのことでした。
これらの研究は多くの研究者との共同研究によって進められており、装置自体の開発も研究には不可欠とのことをお聞きし、石垣先生をはじめ多くの方々の丁寧な研究が「生体をあるがまま捉える」という挑戦を推し進めていることを改めて実感しました。