公開日 2022年10月04日
2022年9月29日(木)12:05~12:50に第59回ご縁ネットオンラインミーティングを実施しました。今回は荒木菜見子先生(米子工業高等専門学校)「戦後地方都市における都市形成過程に関する研究」というテーマでお話をいただき、島根大学、広島大学、米子高専等から16名の参加がありました。
荒木先生は建築学(都市史、建築史)を専攻しています。
今回は、国鉄岐阜駅前の繊維問屋街に着目して、事業主体の形成、都市計画との関係、戦後の制度設計との連関の観点から都市形成過程を明らかにしようとしている研究についてお話していただきました。
荒木先生はこの地域についてまとめた史料や新聞、行政文書、図面、古写真、登記簿を収集するとともに、当時を知る方への聞き取り調査や現状記録などを行っており、このような豊富な史料を元に分析しています。その分析から北満州からの引揚者集団が一人のリーダーを中心に組織化され、自律的な都市形成が行われ、その後、行政が引き継ぐ形で住宅支援事業が進められたことが示されたそうです。荒木先生のお話から、戦後の地方都市の変遷の様子を伺い知ることができました。
参加者からは「街が移動しているが、なぜそうなったのか」「引揚げて来た人が私財を使って復興に貢献しているが、他の地域でもそうなのか」「戦後まもなくの頃を知っている方は少なくなってきているのでは」といった質問が出され、まだまだ分析途中のことも多いと言いながらも、荒木先生は丁寧に答えてくださいました。
「人間の営みの中で都市ほど複雑で難解な作品はないだろう」と都市史研究の一人はその著作で述べています。
荒木先生も自身の研究は都市史だけでなく、人文社会学にも通じる所があり、そこにどういう人間がいて、どういう社会の構造があってそれが都市空間として表れているのかということを調べていきたいと言います。複雑だからこそ挑戦したいという荒木先生の研究への姿勢が印象的でした。