公開日 2021年03月11日
2021年2月9日(火)、女性研究リーダー育成事業の一環として、広島大学 特任教授 学長特命補佐(研究人材育成担当)、相田 美砂子先生を講師としてお招きし、組織のマネジメント力向上のためのオンラインセミナーを開催しました。当日は連携機関や地元企業、ダイバーシティ事業に取り組む他大学の関係者等117名もの参加者が集まりました。
まず、過去から現在に至るまでの、男女共同参画を目指す取り組みについてご紹介いただき、現状まだ日本は男女が平等に活躍できる社会になっていないことをお示しいただきました。男女平等参画の理念は75年ほど前から掲げられているにもかかわらず、未だ実現できていないということは、理念を掲げるだけでは国民の意識を変えるには不十分であるということが分かりました。
組織がうまく機能していくためには、組織にビジョンがあること、そしてそのビジョンを組織内の全ての部署の構成員が共有していることが最も重要であると相田先生は強調します。大学で言うと、大学執行部から、プロジェクトや委託事業等の時限組織、そして学部・学科、さらには自分の研究室に至るまで全ての単位で組織の目的を認識したうえでマネジメントを行い、全体が連動して動いていることが大事であることが分かりました。
長年、女性を組織に取り入れることは、その組織にとってマイナスではないかと思われてきたこともありましたが、近年の研究によってむしろ多様な人材の増加は企業価値の向上につながることがデータから明らかになってきました。そして、特に大学をはじめとする高等教育機関は、世界の未来を担う学生を取り巻く環境そのものであるために、高等教育機関においてジェンダーに関係なく活躍できることを示す必要があるとのことです。そのためには今、多様性を取り込み、硬直化した「組織の価値観」を変えること、私たち個人個人が、組織の一員として、社会人として、また子供の親として価値観を変えていくことが求められていると結論づけました。
講演後の質疑応答の時間には参加者の方から、大学に女性教員を増やすための具体的方策や組織のビジョンの立て方について等の質問があり、活発なやり取りがなされました。
セミナー後に参加者から寄せられた2つの質問について、相田先生にお答えいただきましたので、皆様と共有したいと思います。
Q1.ダイバーシティに関する継続的学生教育をどのようにすればよいでしょうか。
A.知識だけでは(染みついてしまった)価値観が変わらないので、ダイバーシティ環境を実現していくこととセットで進めることが重要、と思います。本人は意識していなくても、「無意識のうちに、受け入れてしまっている」というようなことが多いからです。
ダイバーシティ環境を実現していく、という点については、たとえば、
・性別等にかかわらず、さまざまな機会を与えること、また、それらの機会を活用すること、をあたりまえのこととする。
・入学式や卒業式などの際に、壇上に男性ばかり、というようなことがないようにしていく。
・いかに偏っているのか、が明白であるようなデータを常に公開し、更新し続ける。
のようなことがあります。
これらの行動の実践と、知識を与える授業等を、からめていくことが必要、と思います。
Q2.大学トップのビジョンを教職員全員で共有するのは非常に難しい。具体的な成功事例等教えていただきたいです。
A.大学トップがビジョンを明確にすること、と、その実現のための行動を具体的に全学に見えるように「継続」すること、をセットで進めることが必要です。たとえば、広島大学では次のような事例があります。
・広島大学で男女共同参画推進の取組を始めた時、男女共同参画推進に関わる重要事項は、必ず、教育研究評議会の議事とし、承認のうえで進めました。たとえば、広島大学の全ての教員公募要領に「同等ならば女性を採用」を明示することは、教育研究評議会で承認され、爾来継続しています。女性教員の採用割合や在籍割合は、四半期ごとに、教育研究評議会に報告し続けています。
・AKPI®とBKPI®は、広島大学の「大学力」をモニターするためのものです。これらを導入した際には、まず、教員会や部局長等との意見交換を重ね、そのうえで、役員会で承認し、教育研究評議会に報告しました。爾来、毎年度、教員のAKPIポイントとBKPIポイント、及び、それらの内訳を各教員の学内マイページに示し、それらの各種平均値は、教育研究評議会で報告したうえで学内に公開することを継続しています。
当日の動画配信はこちら(学内限定)