女性技術者・研究者の声/株式会社プロテリアル(安来工場)

(株)プロテリアルの安来工場は、たたら製鉄の近代化を担った雲伯鉄鋼合資会社を源流に持つ工場です。2023年に日立金属からプロテリアルに社名変更し現在に至ります。安来工場は特殊鋼・超耐熱合金を生産する国内最大規模の工場として、高強度でありながら高い靭性と耐久性を兼ね備えた高級特殊鋼を製造しており、工具・刃物材料をはじめ、自動車、エレクトロニクス、航空・宇宙・エネルギー分野など幅広い分野で世界中から注目を集めています。
敷地内には、製造を担う工場と、材料開発を行う冶金研究所があり、現在は約2,400名が働いています。同社は、SAN'INダイバーシティ推進ネットワークにも設立当初から参加されています。
近年では女性技術者数も少しずつ増加しており、今回は3名の女性技術者の方にお話を伺うことができました。
新素材グループ 多久和 萌美さん
松江工業高等専門学校専攻科を卒業し、2019年に入社しました。高専では機械工学を専攻し、材料の研究に取り組んでいました。現在は、特殊鋼の表面にPVD(Physical Vapor Deposition:物理蒸着法)を用いて、特殊な硬質皮膜を形成することで、素材表面の耐摩耗性や摺動特性を向上させる研究開発を行っており、島根大学の次世代たたら協創センター(NEXTA)との共同研究も進めています。松江にある表面改質の工場には約50名が在籍し、女性エンジニアは私を含め2名ですが特に違和感もなく、現場では多岐にわたる業務に携わることができ、とてもやりがいを感じています。
子どもの頃は翻訳家に憧れていましたが、母の勧めで高専に進学し、そこで“ものづくり”の面白さに目覚めました。
冶金研究所 ものづくりグループ 名原 紫織さん
松江工業高等専門学校専攻科を卒業し、2018年に入社しました。高専では情報工学を専攻していましたが、学んだ知識を製造業で活かしたいと考え、この会社を選びました。冶金研究所では、さまざまな分野で利用されている特殊鋼・超耐熱合金の研究開発に取り組んでいます。冶金研究所には現在50名程度が勤務しており、そのうち女性は6名です。専門外の私でも活躍できる仕事の環境を先輩方が指導、支援してくださいますし、フレックスタイム制度があるため、自分の時間も大切にしながら働くことができ、充実感や達成感も得られています。
高専に進学したきっかけは、姉も高専に通っていまして、日々の学校生活の姿を見て『楽しそうだな』と思ったことです。
技術部 今泉 冴香さん
東北大学・大学院で金属工学を専門に学び、2021年に入社しました。ずっと金属に関心があり、なかでも特殊鋼を扱いたいという思いから島根に来ることを決心しました。現在は、製造プロセスの設計や改善、試作品の企画や分析など、工場内の技術的な課題解決に取り組んでいます。技術部には約50名がおり、そのうち女性は5名ですが、特に働きにくさを感じたことはありません。業務では海外のお客様とやり取りすることも多いため、社内では英語の勉強会も実施されています。大学でもそのような自己研鑽の機会があれば、ぜひ参加させて頂きたいです。
理系に興味を持ったきっかけは、両親ともに理系だったことと、家にあった図鑑などの影響です。今はパートナーと家事を分担しながら、家庭と仕事が両立でき、充実した生活を送っています。
3名とも、特殊鋼やものづくりに魅せられてこの道を選んだとのこと。皆さんまだお若いですが、先輩社員の方々のものづくりへの情熱を世代間でしっかり引き継がれてお仕事に向き合っておられることも強く感じました。その情熱を、ぜひこれからの学生、後輩たちにも届けてほしいと思います。